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会長挨拶

会長 大坪 清

創立70周年、新たな時代の起点へ
~人のつながりと知の結集で生産性運動を実践する~

公益財団法人 関西生産性本部
会長 大坪 清



 2026年は、当本部にとって極めて意義深い年である。1956年4月17日に「生産性関西地方本部」として発足して以来、本年度でちょうど70年という大きな節目を迎えることとなった。この長きにわたる歩みは、ひとえに賛助会員組織をはじめとする各界の皆様、そして先人たちが築き上げてきた知恵と情熱の賜物であり、改めてその歴史の重みを噛み締める次第である。


振り返れば、昨年開催された「大阪・関西万博」は、我々の想像を超える大きな足跡を残した。半年間の会期中に国内外から2,902万人が来場し、経済波及効果は3兆円を超え、運営収支も最大370億円の黒字が見込まれるなど、数字の上でも大きな成功を収めて幕を閉じた。しかし、万博の真の価値は、こうした経済的指標のみにあるのではない。


 「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマの下、健康・医療、カーボンニュートラル、デジタル化といった世界の知見が集結し、地球規模の課題解決に向けた具体的な道筋が提示されたことにある。会場を訪れた若者や子供たちが、そこで目にした「未来の姿」に刺激を受け、次代の成長を担う志を抱いたことこそが、最大の成果と言えるだろう。


 我々に課せられた使命は、この万博の熱気を一時的なものに終わらせることなく、そのレガシーを最大限に活用し、持続的な成長へと繋げていくことに他ならない。これは、生産性運動が目指す「個が活かされる豊かな社会の実現」とも深く合致するものである。


 一方で、目を転じれば、世界はもはや「予測が困難な状態(VUCA)」という段階を通り越し、「BANI」と形容される極めて不安定な新局面に突入している。グローバルな供給網の「脆さ(Brittleness)」が露呈し、常態化する「不安(Anxious)」が社会を覆い、原因と結果が一致しない「非線形(Non-linear)」な事象が連鎖する。膨大な情報が溢れ、AIが進展する現在、時に人間の「理解不能(Incomprehensible)」な事象が現実となっていることがある。


 わが国経済においても、人口減少と深刻な人手不足、物価高騰に伴う実質賃金の課題、先端技術分野における国際競争力の相対的低下など、構造的課題が重層的に進行している。BANI時代の荒波の中で、企業組織が持続的に成長を遂げるためには、経済合理性にもとづく効率性追求のみならず、変化を前提とした柔軟なレジリエンスの獲得が不可欠である。


 こうした混迷の時代にあって、当本部は創立70周年を機に、新たな活動ビジョンを掲げる。


 「人のつながりと知の結集で生産性運動を実践する」


 生産性向上の最前線は常に「現場」にあり、その活力を支えているのは他ならぬ「人」である。1956年の設立以来、我々が一貫して活動の前提としてきた「生産性の三原則(雇用の維持・拡大、労使の協力と協議、成果の公正配分)」と、普遍の原理と位置づけてきた「生産性の精神:生産性とは、何よりも精神の状態であり、既存するものの進歩、不断の改善をめざす精神の状態である。それは、今日は昨日よりも、明日は今日よりもまさるという確信である。それはまた、条件の変化に経済生活を不断に適応させていくことであり、新しい技術と新しい方法を応用せんとする努力であり、人間の進歩に対する信念である。」(1959年3月ヨーロッパ生産性本部「ローマ会議」)は、新局面に突入した今こそ、その真価を問われている。論理やデータだけでは解けない「理解不能」な課題に対し、労使学の皆様が日々現場で培われている知恵や創意工夫を繋ぎ合わせる。この「知の結集」こそが、レジリエンスを高め、新たな価値を創造する源泉となるはずである。この新ビジョンのもと、2026年度の活動の柱は次の5本としたい。


1.不確実な未来を切り拓く組織の経営革新活動に学び、自組織の持続的成長とそれを担う生産性革新リーダーの育成を支援する。

2.持続的な発展をめざすこれからの労使関係のあり方について、労使が協力して作り上げた先進的な取り組みに学び、相互の議論を深め、実践活動に展開する。

3.雇用環境や雇用システムの変化、組合員の意識変化を踏まえ、これからの労働組合の果たすべき役割と活動のあり方を考え、次世代労組リーダーを育成する。

4.最新の人材育成プログラムと、業界や組織を超えた他流試合を通じて、変化に対応し、新しい価値を創造し続ける生産性革新リーダーを育成する。

5.当本部の活動基盤の充実と日本生産性本部をはじめとする各地の生産性本部、多くの関連機関と緊密に連携し、新時代の生産性運動を力強く展開していく。


 当本部は、創立70周年を新たな出発点と位置づけ、持続可能で豊かな社会を実現するために、人と組織の力を結集し、関西の地から日本の生産性運動の新たな時代を切り拓いていきたい。

2026年4月

 
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